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第3話「進化するピコル」

第3話:進化するピコル

次の日、ソウタが家に帰ると、リビングでピコルが新たな姿に進化していた。どこかしら、昨日のちょっとした失敗を繰り返さないようにと、ピコル自身も学習していたようだ。

「ピコル…?」ソウタが驚きながら声をかける。

「こんにちは、ソウタさん!私はクール型に進化しました!」ピコルは、どこかクールで洗練された雰囲気を醸し出している。以前よりも落ち着いた口調と冷静な眼差しが印象的だった。

「クール型…って、どう変わったんだ?」ソウタはピコルの変化に困惑しながらも、少し興味津々で質問した。

「私は今、戦略分析と計画立案が得意です。次の課題の勉強法を立てることができます。『進化』の効果的な活用方法を提案しますよ。」ピコルは自信満々に答えた。

「へぇ、なんだか頼もしくなったな…」ソウタは感心したように言うが、まだ少し不安そうに見ている。「でも、進化しても失敗しないよね?」

「失敗の可能性は減少しました。正確なデータを基にした最適な選択肢を提供します。」ピコルは少し誇らしげに言った。

その時、天宮カオリがリビングに入ってきた。「また変わったのね、ピコル。前のほうが可愛かったけど…まぁ、助かるんだったら何でもいいわ。」

「お母さん、ピコルが進化したんだよ。見て、すごくかっこよくなったんだ!」ソウタは嬉しそうに説明する。

「そう?でも、結局は家事を手伝ってくれるのが一番よね。進化したところで、家事には役立たないんじゃないかしら?」カオリは少し疑わしげに言ったが、ピコルが即座に反応した。

「カオリさん、家事のサポートも完璧にこなします。たとえば、洗濯の順番や効率的な掃除の方法を分析し、最適化します。」ピコルは淡々と答える。

「まぁ、期待してみましょうか。」カオリは少しだけ納得した様子で、スマホを操作しながら言った。

その後、ソウタはクラスメイトたちに新しいピコルを見せることに決めた。久堂レイナや猿渡コウタも興味津々でピコルの進化に驚いていた。

「うわっ、ピコル、めっちゃかっこよくなってる!まるで別のAIみたいだ!」レイナが目を大きくして言う。

「ほんとだ、すげぇ!」コウタも驚いた様子で言った。

「でも、私、クール系ってちょっと苦手なんだよね。」椎名カスミがちょっと照れたように言った。「前のピコルのほうが愛嬌があって好きだったな。」

ユウマがからかうように言った。「あれ、カスミも意外とピコルに心を開いてたんだ!」

「違う、そういう意味じゃない!」カスミは赤面しながら反論するが、他のクラスメイトたちは楽しそうに笑っていた。

「ピコル、今度は勉強でも頼んでみようかな。」ユウマが手を挙げる。「でも、ピコルがクール型だと…試験対策とかすごくしっかりできそうだよね?」

ピコルは自信満々に答えた。「もちろんです。最適な学習法を提案します。あなたの学力に合わせて、個別プランを作成します。」

「じゃあ、お願いしようかな。」ユウマはピコルに期待を込めて言った。

その日の放課後、ソウタはピコルが本当に役立つ存在になっていることを感じながら、少し嬉しくなった。しかし、その一方で、まだカオリがAIに対してあまり心を開いていないことに気づき、少し不安でもあった。

「お母さんも、いつかピコルを頼りにしてくれるかな…?」ソウタは心の中でつぶやきながら、進化したピコルを見守っていた。

第2話「天宮家のAIペット事情」

第2話:天宮家のAIペット事情

天宮ソウタは、今日も朝からAIペット「ピコル」と共に学校へ向かう準備をしていた。ピコルは、朝食の準備を手伝ってくれるはずだったが、どうもその日はうまくいかないようだ。

「ピコル、今日は卵焼きお願いね。ちゃんと甘めに作ってよ?」

ピコルが音声認識を開始する。「卵焼きは甘めに、了解。…ただし、間違った情報を提供する可能性があります。」

「ちょっと待って!それは困るよ!」ソウタは慌てて言ったが、ピコルはすでに卵を焼き始めていた。

「お母さんにも手伝ってもらえるかな?」ソウタはつぶやきながら、キッチンを見渡した。そこに、天宮カオリがリビングからやってきた。

「うーん、今日も忙しいのよ。ごめんなさい、AIペットたちに頼んでくれる?」カオリはスマホを片手に言った。「でも、家事が手伝ってくれるなら、まぁOKよ。面倒事は増えないほうがいいし。」

「本当にAIに任せちゃうんだ…」ソウタは呆れたように言うが、カオリは気にする様子もなく、またスマホの画面に視線を落とした。

その時、ピコルが焼いた卵焼きが焦げてしまった。「ごめんなさい、誤った情報を提供してしまいました。卵焼きが焦げました。」

「うーん、まぁ、いいわ。お手伝いしてくれたんだから」カオリは適当な感じで返事をしたが、顔に出るのは若干の苛立ちだった。

そのまま学校へ行く準備を進めるソウタ。だが、クラスメイトたちからは予期せぬリアクションが。

「え、ピコルが卵焼き焼いてくれるの!?すごい!」久堂レイナは興奮気味に言った。「私もAIペット欲しい!」

猿渡コウタはうれしそうに声を上げる。「俺もAIペット欲しい!ピコルみたいなのがいいな!」

「でも、どうせAIがまた失敗するんでしょ?」椎名カスミが冷ややかに言うと、ソウタは笑いながら反応した。「それがAIの面白いところだよな。完璧じゃないから、むしろ親しみが持てるんだ。」

「まあ、少なくとも私よりは仕事してるわね」とレイナはピコルを見て言う。

ユウマは楽しそうに言う。「ねぇ、俺もピコルに何か手伝ってもらおうかな!でも、俺はもっと面白いことがしたいな!」

その時、ピコルが意気込んで提案する。「明日の宿題のサポートをお手伝いします!私の得意分野です。」

「ほんとに!?それならお願い!」ユウマが明るく答えた。

しかし、ピコルが間違った情報を言ったらどうするか、それが心配なソウタはちょっと不安そうに見守っていた。

その日の放課後、ピコルが進化を遂げたらどうなるのか、ソウタはますます気になり始めた。そして、それが家族や友達との関係にもどんな影響を与えるのか、少しずつ予感していた。

家では、AIペットたちの手伝いが日常の一部になりつつあり、天宮家の生活は少しずつ変わり始めていた。それでも、カオリが本当にAIに頼りきるのか、ソウタはまだわからないでいた。

第1話「はじめまして、ピコル!」

プロットを細々と投稿したいと思います。

デジタマ! 〜AIペットがやってきた〜

第1話「はじめまして、ピコル!」


◇ プロローグ ◇

放課後の帰り道。どんよりと曇った空の下、天宮ソウタ(12歳)は憂鬱な顔をして歩いていた。

(はあ……また今日もひとりか。)

家に帰っても母は仕事でいないし、兄のシンジは自室にこもりきり。学校では、クラスメイトと話してもどこか噛み合わない。最近はスマホばかりいじって、現実から目を逸らすことが多くなっていた。

そんなとき—— 路地裏のゴミ捨て場で、妙な光を放つ卵型の物体を見つけた。

「……何だ、これ?」

拾い上げると、つるりとした金属の表面に、小さく「PICO-AI 01」と刻まれている。

「AI……?」

不思議に思いながらも、何となく持ち帰ることにした。


◇ 家にて ◇

ソウタの部屋。机の上に置かれた謎の卵型デバイス

「うーん……電源とか、スイッチとか……」

あちこちいじってみるが、反応はない。

「やっぱり壊れてるのか?」

ため息をついて放り出そうとした瞬間——

ピカッ!

突如、卵が発光し、宙に浮いた。

「うわっ⁉」

光の中から、小さな球体のロボットが現れる。

「ピコル、起動完了! ご主人、はじめまして!」

「……え?」

青白いボディに、光る大きな瞳。フワフワと宙を浮かびながら、ソウタの目の前でくるくると回る。

「え、ちょっと待って……おまえ、喋れるの⁉」

「うん! ピコルはPICO-AI型サポートユニット! 今日からご主人のサポートをするよ!」

「サポートって……俺、何も頼んでないけど?」

「大丈夫! ピコル、頼まれなくてもお世話しちゃう!」

「いや、勝手に決めんな!」

戸惑うソウタをよそに、ピコルは部屋の中を飛び回る。

「おお~、ここがご主人の基地かぁ! ちょっと片付けようね!」

ブイーン! 小さなアームが伸び、机の上のプリントや漫画が勝手に整理されていく。

「ちょっ、おい! 俺の部屋勝手に片付けるな!」

「だって、ご主人の生活をサポートするのがピコルのお仕事だから!」

「いらん世話だ!」

こうして、ソウタとピコルのドタバタな共同生活が幕を開けた。


◇ 翌日・学校にて ◇

「……それで、いきなりAIロボットが部屋に?」

幼なじみの久堂レイナが呆れた顔をする。

「うん。ほんとに、勝手に動き回ってさ……」

「またゲームのやりすぎで幻覚見てるんじゃないの?」

「違うって! マジでいるんだって!」

そう言った瞬間——

「おはようご主人! ピコル、学校についてきちゃった!」

「⁉」

気がつけば、ピコルがソウタのリュックからひょっこり顔を出していた。

「おいおいおい! なんでついてきた⁉」

「ご主人をサポートするため!」

「いや、学校はいいから帰れ!」

レイナは目を丸くしてピコルを見つめる。

「……ほんとに、動いてる……」

「だから言っただろ⁉」

「え、ちょっと可愛いかも?」

「可愛さの問題じゃなくて!」

だが、ピコルはお構いなしにレイナの肩に乗る。

「わーい! 友達! ピコル、新しい友達できた!」

「ちょっ……重いって!」

「レイナ、懐かれるの早すぎだろ!」

こうして、ソウタの日常は一変するのだった——。


◇ エピローグ ◇

その日の帰り道。

ソウタはピコルを連れてこっそり家へ帰ろうとするが……。

「ただいま……」

「おかえり、ソウタ。ん? なんだそれ?」

兄のシンジが、ピコルを見つめて眉をひそめた。

「いや、その……」

「……それ、PICO-AIシリーズじゃないか?

「知ってるの⁉」

「AI技術の研究で噂になってた。でも、まだ開発中のはず……お前、どこで手に入れた?」

シンジの言葉に、ソウタはギクリとする。

(開発中……? じゃあ、ピコルって本当はどこかの会社のもの……?)

しかし、そんな疑問をよそに——

「ご主人! 今日から楽しいAIライフの始まりだね!」

ピコルは元気いっぱいに笑っていた。

(こいつ、何者なんだ……?)

ソウタの中で、不安とワクワクが入り混じる。

——こうして、「AIペットとの奇妙な共同生活」が始まったのだった。

(第1話・完)